五年前
2000/01/17
月を見ていた。
三国山地にかかる満月が、限りなく白銀色に近い青い光を放って稜線に沈もうとしているところだった。
午前５時４０分頃。
満月が地平線に掛かるとき、黄泉の国の扉が開かれるという言い伝えが在ったのを思い出していた。
月の出に 死者ども達と 汽車を待つ
こんな前衛的な俳句を読んだときに、体が動かなくなるほどの衝撃を受けたのを思い出した。
月の出。
月が、血の色をした月が地平から沸きあがってくる時に黄泉の国の扉を連想させるのは全くだ。
冬の沈まんとする、全く温度を感じさせないほど冴え冴えとした月も十分に異世界との接点を演出している。
黄泉の国というのがあれば本当にここから出入りできるんじゃないか。
そう思うには十分すぎる演出だった
最初のニュースはそのすぐあとにラジオの口から流れてきた。